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BleuCiel(別館)

気の赴くままに

【ブルードラゴン】【SS】

アニメ版ブルードラゴン。二期後。
ジーロ、クルック。





「料理、出来るんだな」

 クルックのところに来ていたジーロは感嘆の声を上げる。手土産として貴重な食材を持ってきた。一人で過ごすことの多いジーロは料理も無難にこなす。クルックの料理の手伝いをしているが、ジーロの手際はいい。彼はクルック作の過去の料理を思い出してわずかに青ざめた。彼女は小さな声で言う。まるで独り言のように。ちなみにアンドロポフは外で子供たちと遊んでいる。村一番の元気印に振り回されているだろう。

「昔よりも上手になったんだから」
「……自覚はあったのか」
「アンドロポフと一緒に暮らすようになってから、ちょっと思った」

 アンドロポフと同棲をしていると聞いたジーロがほんの少し気がかりだったのは、料理のこと。ゾラと旅をしていた頃のジーロは余裕がなく、最初こそ誰かが作った料理も気にも止めなかった。その時間がもったいない。その一心で拒絶していた。少し時間が経ち、明らかにシュウがクルックの料理を避けていることを感じ取り察した。彼女は《そっち側》の人間だと。無自覚系で良かれと思っての行動を頭ごなしに拒否し続けるのは、拒否する側にも罪悪感が生まれる。それはジーロにも心の余裕が生まれ、シュウやクルックを旅の仲間だと認め始めていた証拠でもあった。
 作業を進めつつも申し訳なさそうにするクルックに、ジーロは話題を変える。今のクルックの手さばきは見ていて安心出来る。ジーロと別れてから数をこなし、クルックの料理の腕はずいぶんと上がった。その過程でアンドロポフは何度か犠牲になったが、彼はそんな彼女も好いていた。……さすがに《そっち側》だとは思ってもいなかったようだが。今ではお菓子も作ることが出来る。彼女が作るお菓子は村の子供たちの好物にもなった。

「小豆でも持ってくれば良かったか」
「なんで?」
「なんでもない」

 ジーロが過去の苦い思い出話から逸らしてくれたことに気づき、クルックは表情を和らげる。遠方の地で目出度いときに使う食材――一人で旅を続けていたジーロが、たまたま立ち寄った町で聞いた話だった。クルックはジーロの意図が分からず首を傾げる。分からないならそれで良い、もともと話題を変えるためだけに出したもので深い意味はない。クルックも気になっていたことを口に出す。

「そんなことより、スィーさんは元気にしてる?」
「最近は会うこともないけど……まぁ元気だと思うぞ」
「そっか。いつかお茶でも出来たら良いのに」

 兄の意志を引き継ぎ情報師となったスィーは相変わらず世界の情報を収集している。むしろ今のほうが生き生きと活動出来ているとか。そんなこんなで、一時は共に行動することもあったジーロも最近では会ってすらいない。スィーの生業的に、それはある意味で無事な証拠かもしれない。クルックも理解している。

「そういう《情報》を知ったら来てくれるかもな」
「だと良いけど」


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