※モブ死要素有。
アニメ版ブルードラゴンとカブトボーグのクロスオーバー。
ブルドラの二期後。リュウセイさん達がブルドラ界の人間(パラレル)。
クルック視点。
クルック、勝治。
おくりびと
「さようなら」
「…………」
男性は息を引き取る。安らかな寝顔だった。男性の故郷である村は、昔グランキングダム軍に責められて大打撃を受けた。復興することなく廃村になったそうだ。脈を測り、呼吸の有無を確認する。今あたしが出来ることはやり切った。男性も家族水入らずで過ごしたいだろう。あたしはその場を去る。
いつからか、余命が残りわずかな人が希望する最期の場まで連れて行くことがあたしの日課になっていた。はじめは良くて月に一度あるかないかだったのに、あたしの噂がどこからか広まって今ではわざわざ依頼に来る人もいる。あたしも医療の知識は少しばかりあるゆえに、無意味に励ますこと出来ない。依頼者と落ち合わせた場所に戻り、報告をする。医学が発達した街でも、最期の看取り方については方向性が定まっていない。何が正解かなんて永遠と分からないだろう。家に戻る前に散策をする。もしかしたら掘り出し物が見つかるかもしれない。
「…………」
「…………?」
男の子が意味ありげにあたしを見る。すぐ視線を逸らされたが、確かにあたしのほうを見た。
「ちょっと待って!」
気のせいだと思うことも出来た。あたしの勘違いだったら恥をかくだけだ。勘違いではないらしく、男の子は立ち止まる。少し線の細い彼は中性的な顔立ちも相まって綺麗な子という感想を抱く。それとは別に、この子も何かを背負っている。そう思える理由は特にない。いろいろと経験をしてきた上での勘だ。
「お姉さん、ほどほどにしたほうが良いですよ」
「っ!」
それは忠告だった。あたしがしていることを、それとなく知っている。だったらそんなにオブラートに包まなくてもいいか。あたしは彼に、彼に告げ口をしたであろうナニカに言い返す。
「後悔はしたくないから。それに、あたしの出来ることなんてたかが知れてるわ」
今のあたしが出来ることは、死に場所を変えることぐらい。延命なんて出来るはずがない。彼が警告するようなことは、遠い昔既に行っている。男の子は曖昧な笑みを浮かべた。無意味な忠告であることは分かっているはずだ。きっと彼は頭の切れる人だ。ネネからみんなを護ったあの日から、あたしは死ぬまでフェニックスと共に過ごす。もう後戻りは出来ない。遠くから二人の男の子が駆けてくる。彼の友達だろう。
「じゃあね」
願わくば、もう交流しないことを。それはお互いが平穏無事に暮らしている、何よりの証拠だろうから。