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BleuCiel(別館)

気の赴くままに

【ボーボボ】Con anima*3【SS】

emojiサイレント修正有
続きもの
ほんのり!どんぱっち。
ビュティ、首領パッチ、破天荒。



 Con anima*3


 帰省していたソフトンも今の住処に帰り、にぎやかな日常が戻ってきた。ときどき三大文明がビュティの家に上がりくつろいでいる。パンコやリンとの仲も変わらず良好で、ヘッポコ丸もヘタレっぷりを存分に発揮していた。
「(おやびんは今日もかっこいいっす)」
 破天荒は庭で首領パッチを眺める。室内にいるビュティと首領パッチが窓を開けて破天荒に声をかけた。
 ビュティは外出する予定がないのか、先日兄が帰ってきたときにもらった苺味のソフトクリームが描かれたTシャツにスエットパンツというラフな格好だ。首領パッチは別の単語を言おうとするが、ビュティはソフトクリームと言い切る。別の単語を口にしたら最後、彼女の仕返しとして首領パッチのご飯の量が少なくなる。
 破天荒はピンクのとぐろ状のあれにどこか既視感を覚えながらも、この世界にたどり着いてからトゲが丸くなった首領パッチを見た。温厚なビュティでもデッドラインがある。好奇心猫を殺す、彼の定位置を剥奪されたらたまったものではない。
「破天荒さん、お菓子があるので一緒に食べませんか?」
「ってかお前、はたから見たら不審者待ったなしなんだよ」
「おやびん!?」
「あ、あはは……」
「(嬢ちゃんまで……まじか)」
 首領パッチの意見にビュティも否定はしない。首領パッチに会うためならばと見ず知らずの新天地に飛び込んだ破天荒はビュティの家の庭に住んでいる。彼女としては空いている部屋のひとつを使ってもいいと思っていたが破天荒としてはそうもいかない。
 破天荒いわく首領パッチを敷地内で眺められるベストポジションが庭なだけなのだが。あくびが出るような退屈な場所にわざわざいる意味。ここに来てからカギ真拳を使っていない。使う必要がないのだ。
 最初はまた元の世界で旅に出れるのではないかと淡い期待を抱いていたが、ビュティと首領パッチの関係を見て少なくとも彼女がそばにいるうちは無理だと悟った。首領パッチが最初からいたかのように馴染んでいるのだから。破天荒がひと回りも歳下の女の子に嫉妬するほどに。
「首領パッチ君、このお皿机に並べてくれる?」
「あたり前田のクラッカー!」
「破天荒さんはまず手を洗ってください」
「わーってるよ」
 座卓の上に色とりどりのお菓子が並ぶ。三人はお菓子を食べ終え、首領パッチはひとりで外に出ている。破天荒が「お供します!」、と告げるといつの間にか化粧をした首領パッチーーパチ美は全力で拒絶した。泣きながらも首領パッチの言いつけを守る破天荒の忠誠心にビュティは感心する。
 二人は残ったお菓子と飲み物でくつろいでいた。首領パッチが出かけた直後はビュティが宿題をしていたが、すでに大半を終わらせていたこともあってすぐに終わる。
「自由ですね、首領パッチ君」
「おやびんはそういうお方です」
「たしかに。……」
 ビュティは目を細める。破天荒は彼女の髪色と同じ花びらを持つ木を連想した。春が終われば散ってしまう儚い命。人間である彼女は破天荒や首領パッチより脆い。それは首領パッチや破天荒がいた世界でもそうだ。
 術を持たない人間はあっけなく毛を刈られて自らの人生を悲観することがほとんどだ。知恵を用いて生き延びていくこともあるが、それには運も必要になってくる。
「(誰だ?)」
 破天荒の脳裏に浮かんだのはビュティとよく似た少女。はっきりとした全体像も名前も思い出せない。破天荒は眉間に皺を寄せた。記憶力は悪くないほうだと自負している。それは世紀末な世界で生き残る術のひとつだ。
「破天荒さん、変な話をしていいですか?」
「あ、ああ」
「首領パッチ君、私を通して違う人を見てるときがあるんです。それがちょっとだけ悔しくて、でも本人には聞けなくて。破天荒さんに改めて言われたときに、やっぱり首領パッチ君って掴みきれない人だなって」
「そりゃ、おやびんだからな」
 破天荒は彼女に気の利いた言葉をかけることができない。兄が帰ってきたときに、彼女がどれだけ兄に懐いているのかが痛いほどに伝わった。それと同時に、首領パッチのことも家族の一員とみなしていることも。
 彼女は破天荒たちの世界を知らない。この世界に住んでいる彼女にとっては当たり前の光景でも、彼女がいる場所に比べて殺伐とした場にいることの多い彼にとっては珍しい光景だったりする。
「(割り切れっていうのは酷な話か)」
「…………」
 ビュティは視線を下げる。家族と離れて暮らすのは今でこそ慣れたもののさみしいことに変わりない。破天荒は苦い顔をした。荒れた大地に映える桃色の髪の毛、ハジケリストに一級品のつっこみを入れる戦場に立つにはあまりにもろい少女。それでも〈彼女〉も立派な戦力のひとりだった。
「(ったく、めんどくせえ)」
 破天荒は分別をしているつもりだった。……いや、あえて記憶に鍵をかけていた。ビュティが自覚しているのかしていないのか、彼女も掴み切れない人ではある。破天荒からの反応が芳しくない。彼女は微苦笑を浮かべる。
「ごめんなさい、突然そんな話をされても困りますよね?」
「いや、むしろ腑に落ちた」
「え?」
「(意識するなってほうが無理な話なんだよ)」
 破天荒を困惑させていたと思っていたビュティが戸惑う。思いがけずに出た彼女の声が上擦る。彼は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「悔しいけど、嬢ちゃんはおやびんに大切にされてる」
「破天荒さんこそ。〈私〉は首領パッチ君に住処を提供しただけです」
 この世界が破天荒たちがいた世界とどうつながっているのか、はたまた偶然似たような存在がいるだけの平行世界なのかはまったく分からない。それを解明する必要性を破天荒たちは感じていない。
 無言の時間が続く。ビュティは湿っぽい雰囲気を払拭するかのように手を叩いた。首領パッチに対する不安を吐露したのも彼女だが、それを破天荒に伝えても彼にはどうすることもできない問題だということは理解している。
 彼女は居間から台所に向かう。破天荒は彼女の意図が読めずしばらく動向を見守っていた。
「よし、今日の夜はプルコギにしましょう!」
「突然どうした!?」
「夢でそんな単語が出てきたんですよ」
 夢のなかのプルコギは食べ物となんの関係もなかったのだが。ビュティは一笑してから冷蔵庫の中身を確認する。足りない物を脳内のメモに記した。
「……(嬢ちゃんが、オレたちの世界の夢を?)」
 破天荒は一驚して彼女のもとに向かおうとした足を止める。首領パッチも破天荒もあの世界の〈彼女〉の話は一切していない。そんな彼の動揺を知らずに振り返ると彼は固まっていた。彼女としては場を和ますために発した言葉だったので彼の反応は想定外だった。
「そんなに変でした?」
 彼女は不思議がる。破天荒は首を横に振った。今度こそ彼も台所に向かう。
「わりぃ、ちょっと驚いただけだ。で、材料はあるのか?」
「なんとかなりそうです」
 彼女は親指を立てる。破天荒も彼女につられて親指を立てた。


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