アニメ版ブルードラゴン。二期後。
クルック、アンドロポフ。
私の歩む道
戦いは嫌い。誰かが傷つくから。あたしがいかに無力な存在か思い知らされるから。でも、ただ見ているだけの人間になるのはもっと嫌だ。なんのための影だか分からない。
「――あたしも行くわ」
「クルック……」
アンドロポフが難しい顔を浮かべていると思ったら、どうやらロギさんやプリムラたちの身に危険が及ぶとのこと。戦争は悲しみしか生まない。上位生命体からの試練で大きな争いは影を潜めたとはいえ、小規模な戦いはどこかしらで起こっている。それに、片方に理由さえあれば戦は簡単に起こる。
今回は単純明快、ロギさんたちに復讐するためだ。それにあたしが口を出す権利はない。でも、どう行動するかは個人の自由だ。
ロギさんはアンドロポフを巻き込むつもりはなかった。事務的な作業を指示しているとはいえ、形式上はもう部下ではない。あえて表舞台に出るのは、アンドロポフも一端を担っているから。それを言うならあたしだってそうだ。
「シュウたちは知ってるの?」
「いや、少なくともその集団には加わってない。まぁ情報屋から漏れてそうな気がするけどな」
「そう。だったら対立することはなさそうね。ブルードラゴンの攻撃力は洒落にならないんだから」
あたしは冗談交じりに言う。シュウはいない。それだけが救いだった。前はグランキングダムと、後にはローゼンクロイツと対立していた。シュウと一緒にロギさんと戦ったこともあった。
あれから月日が経ち、シュウとロギさんがにらみ合うことはあっても影を出してまでして戦うことはなくなった。それでも怖い。正義の味方としてシュウがローゼンクロイツと対立することになるかもしれない。それはきっとシュウ一人ではどうにもならない波。そんな日が来たらあたしは……。
「本当に良いのか?」
「えぇ。マチルダさんには悪いけど」
マチルダさん、ロギさんのこと心酔しているからなぁ。
内心アンドロポフのことも良いように思っていないはずなのに、似たような能力を持つあたしまで参戦なんてなったら大荒れだろう。でもマチルダさんはロギさんのそばにいてもらって、あたしはみんなの盾になるのなら問題ないよね、うん。あたしとフェニックスの主軸は防御な訳だし。
* * *
目の前にはたくさんの人だかり。数年前まではあちら側の人間だったのに、人生何が起こるか分からないものだ。殺気立った人たちは、女ひとりが立ち塞がったことに対してざわめく。問答無用で攻撃はされなかった。
「(世の中ってそううまくいかないものね)」
「――そこをどけ!」
「嫌」
あの人たちの生きる源は怒り。上手くいくかは分からないけど、あたしとフェニックスで受け止めるだけ受け止めてみせる。フェニックスを発動させ、息を整えた。
お互いに譲れないものがある。あたしに退く意思がないことを察した人たちは、攻撃の狼煙をあげる。我慢比べが始まった。別の部隊は侵入を始めているだろう。今は気を遣っている余裕はない。