アニメ版ブルードラゴン。二期後。
ジーロ、クルック。
証
争いが続くなかでも、人々は懸命に毎日を生きる。誰かの帰りを待ちながら、笑ったり泣いたり、ときには誰かと喧嘩をしたり、恋に落ちたり。それは今も昔も変わらない姿。安心して過ごせる未来を信じて、日常を過ごしていた。
ジーロはクルックと共に、フェニックスのテレポートを利用して彼の生まれ故郷――マッフェイの村の入り口に降り立つ。グランキングダム軍によって壊滅状態に追いやられた場所のひとつだ。攻撃を防ぐ手段は持っておらず、必死の抵抗も雀の涙に等しい。
「わざわざすまない」
「あたしも行きたい場所があったから。みんなによろしくね」
クルックはテレポートで別の場所に向かう。ジーロはクルックから託されたお供え物と、自分自身が持参したお供え物を持って草木が生い茂る村に足を踏み入れる。家族と、そして村の人たちと過ごした場所は荒れ果てていた。彼は荷物を置き、手入れしていく。
グランキングダム軍を憎み、自分の弱さを嘆き、ジーロはたくましく成長した。敵であったネネを倒したあとも争いはなくならず、ジーロは日々鍛えた。彼は時おり思う。今の状態であのときに戻れるのならば、きっと最悪の事態は防げたのだろうと。
『――――!』
炎に飲まれ消えていく命の灯。ただただ熱いと訴える人もいれば、自分を、身内を助けてくれと懇願する人もいる。当時のジーロ一人ではどうにも出来ない。家族の安否も心配だった。あの村での生き残りは恐らく自分だけだとジーロは認識している。
ある日、彼は夢を見る。それは、まだ村が業火に飲み込まれる前の日常。村を語り継げるのは自分だけだ、――ジーロは村に行く決意を抱く。つらい思い出だけではなく、家族や周りの人たちとの幸せな日々もあった。
ジーロはクルックに相談した。自力でも行けるが、なるべく早く村に帰りたかった。それに、誰かと記憶を共有しておきたかった。つらい出来事だけでなく、楽しかった記憶を、暮らしていた人たちのことを。クルックはジーロを話に相づちを打つ。彼が在りし日の村の姿を語るとき、あまり見せない柔和な表情を浮かべた。
* * *
ジーロと別れたクルックは、ジブラル王国跡に来た。 たった一度の攻撃で、街は滅茶苦茶になった。点在するお墓は、この地で生きていた人たちの証だ。命からがら生き延びた者、たまたまこの地におらず助かった者、ときには第三者がお墓を建てる。
クルックがこの惨状を知ったのは、しばらくあとのことだった。彼女はお墓に水を供えていく。火の手はあらゆるものを燃やしていった。クルックは詳しい状況を知らない。後日詳細な状況を把握したであろうコンラッドは、口を固く閉ざす。それでもクルックなりに想像することは出来た。
「(苦しかったでしょう? 助けられなくてごめんなさい)」
足元には人々が暮らしていた痕跡が遺されている。クルックはそれらを優しく拾い上げ、近くのお墓や道の片隅にそっと供えた。食器の破片や子供の玩具など、さまざまな物がある。失ったものは戻ってこない。
繰り返される負の連鎖は、彼女一人では止められない。今もどこかで争いは続いているのだろう。シュウやブーケのレジスタンス活動はまだ続いている。矛盾を抱えながら、クルックは自分に出来ることをしていく。
『ねぇねぇ、空すっごい綺麗!』
『え? ……ほんとだ~!』
楽しそうな子供たちの声。クルックは振り返るが誰もいない。幻聴なのか、本当にいるのか彼女には分からない。クルックは空を見上げる。雲ひとつない快晴だった。どこまでも続く空に吸い込まれそうになる。クルックは前を向いた。彼女は現実をこの目で見ると決めたのだ。
村が火の海になったときのことを話すジーロは、悲痛な面持ちだった。クルックは彼の村に起こった悲劇も、かつてあった日常も彼女なりに受け止める。ジーロなりに、新しい一歩を踏み出そうとしていた。
――確かに生きていた人たちがいる。当たり前の日常が、こんなにも貴(とうと)く脆い。
◆珍しく後書き的な◆
特にこの時期にこの手の話題、どこまで突っ込んで良いのか分からない。でもブルドラ二次する際にはついつい考えるようになった今日この頃。いや昔妄想してた時も大概だったけど。アニメ描写とか台本見てると、朝アニメらしくグロ方向での残酷描写は限りなくマイルドに表現してるんだろうなぁって勝手に認識してる。なお二期の修羅場。シュウ達はあの世界の色々見てきただろうから、ゆるーく生きてる自分は変な解釈してるかもしれないと思いながらシリアス話書く時は悶々としてる時が多い。アニメネネはうーん(超オブラートに包んだ表現)って感じですはい。鬼悪魔ネネ。デルフィ姐さんステイ。
ブログに上げたけどまだ仕上げきれてないゾラの話は、シュウ達と再会させたい私の我儘。巻き込まれ組からしたら何してくれとんじゃワレェってなるけど…あのままさよならバイバイも嫌だったんです。