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BleuCiel(別館)

二次創作、時々一次創作置き場。イラストも?

【ブルードラゴン】太陽と月【SS】

アニメ版ブルードラゴン。二期後。
アンドロポフ×クルック。



 太陽と月
※自分が出来る精一杯の甘めポフクル(なおシリアス)


 ――あんたが太陽なら、あたしは月になる。

 クルックは、星々が瞬く夜空を眺めていた。夜空の主役を星に譲り、月はひっそりと輝いている。彼女は、月光浴をしながら今までの出来事を振り返る。
 クルックの様子を見るために、アンドロポフもやって来た。彼女は彼の気配を背後で感じつつも、彼女は彼を見ようとしない。彼女は、背中で彼に語りかける。
「アンドロポフ、今日は星がひときわ奇麗ね」
「何を企んでる?」
「もう、人聞きの悪いことを言わないでよ」
 ここでようやくクルックはアンドロポフと向き合う。彼女はここ数日、思い詰めたような表情を浮かべることが多かった。かと思えば、今は晴れやかな表情を浮かべている。慈しみのなかに在るのは、自分の身を投げだす覚悟。
「……アンドロポフはこの村が好き?」
「何を今さら」
「そうだよね。今のあなたならあたしがいなくても、」
 アンドロポフは、クルックの言葉を遮るように抱きしめる。
「……っ」
「そんなことを言わないでくれ……!!」
「アンドロポフだって分かってるでしょ? あたし、中途半端な人なの」
「おれだって同じさ」
 クルックは、アンドロポフからそっと距離を取る。彼を見る瞳は優しい。シュウとは違う家族の形を教えてくれた、クルックの大切な人。その代償は、あまりにも大きかったが。
 アンドロポフの兄貴分でロギの忠実な部下は、アンドロポフを遺してひと足早く逝った。
「今でも争いは嫌い。でも、シュウがすることにも限度がある。ロギさんだって、昔みたいな統治の仕方は難しいだろうし」
「そうだな」
 新しい世界の枠組みを作るには、長い月日がかかる。気の遠くなるような、長い月日が。シュウもロギも、手段は違えど根本的な部分は似通っている。
 絶対の正解がない問題に、誰もが取り組む。クルックも、彼女のできる範囲でできることをしていた。傷ついた者を治癒したり、フェニックスの能力を活かして危険な場所から即座に離れたり、危険から身を守ったりする。
「ゾラがしようとしてたこと、少しは正しかったのかな、なんて」
 慈愛に満ちた瞳とは裏腹に、クルックが手を出そうとしていることを察したアンドロポフは、思わず唇をふさぐ。
「んっ」
「(おれはここにいる)」
「ぁ……ッ」
 独りで抱えこんでしまわないように、彼女を想う人が身近にいることを示すために。
 アンドロポフはクルックの吐息すらも、自分のものにしようとする。彼女は彼の行為に驚いたものの、彼に身を委ねた。
 己の欲に忠実に従う。
 自分がしたことを自覚したアンドロポフの顔が、赤く染まる。クルックも惚けている。
「「…………」」
 二人とも何も話さない。アンドロポフは咳払いをして、改めてクルックと向きあう。今度は真剣な面持ちで、彼女の瞳を見た。
「おれはクルックに助けられた。新しい世界を教えてもらった。どこへだってついて行くさ」
「ロギさんに歯向かうとしても?」
「クルックもロギ様もそういう人じゃない」
「買いかぶりすぎよ」
「……《そのとき》は、きっとどうしようもない波が来たんだ」
 ネネとは違う形での、世界の統治者であろうとするロギ。それは、クルックだって知っている。仮に《そのとき》が来たとしても、アンドロポフは彼女を止めない。
 それは個人の意志ではどうにもならないところまできてしまっていることを、指しているのだから。

 ――だとしたらおれは、月を護る衛星になる。



◆後書きのようなもの
普段は載せっぱなしだけど、個人的には頑張った方なのでちょっと言い訳タイムを。
ポフクルちゃんシリアスな流れでごめんね! クルック引き留め隊にならないとキース!すら難しいの、私が。


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