※V基準で双子主。
ポケモンSV。本編後。
ペパネモ。
アオイ(女主人公)、ペパー。
二律背反
ポケモンリーグの運営から招集されたハルト、ネモ、ボタンの三人の帰りを待つアオイ、ペパーはペパーの寮の部屋で夕ご飯の支度をしていた。ポケモンもモンスターボールから出て手伝ったり、じゃれ合ったり、好きなように過ごす。
金曜日の放課後、誰が発案したのか気がつけばあっという間にそういう――土曜日は五人で一緒に過ごそう、という話にまとまった。幸いなことにいつもの面子のなかで料理が出来る二人組――ペパーとアオイが一日空いており、調理道具一式が揃っているペパーの部屋で支度を進めることになる。
ボタンから連絡が入り、ハルトとネモは少しポケモンバトルをして寮に戻ると知らされた。『ネモいな』、と三人は同じ感想を抱く。ハルトもネモも、用事がない日は丸一日ポケモンバトルに費やしかねない。そんなときはときどきミライドンが派遣され、強制的に終了したりしなかったり。パルデア地方においては異質な二人だ。
「ここだけの話、ときどきネモに嫉妬するんです」
簡単な計算をするかのようにあまりにもあっさりアオイが告げるものだから、ペパーはアオイの言葉を反芻してようやく発言の意味を理解し、食材を床に落としかける。危うく食べ物を粗末に扱うことろだった。
「あ、アオイが嫉妬ちゃん?」
「ネモはパルデアで初めて出来た親友です。もちろんペパー先輩もボタンも親友ですよ?」
「お、おう」
「でも、ハルも大事な弟なんです。わたしはネモみたいにハルと同じ位置に行けない。わたしの立ち位置をちょっとだけネモに取られたのが悔しい、……多分」
アオイは複雑そうな表情を浮かべる。アオイとネモは同じクラスのよしみもあり一緒に過ごすことが多い。アオイは結局四天王に挑まなかったが、彼女も短期間でジムバッジをすべて集めた人間だ。ポケモンバトルも双子の弟の影響もあり、嫌いではない。むしろ楽しいとさえ感じる。
ペパーはアオイの言い分がなんとなく理解出来た。その人しかなり得ない立場を羨ましく、ときに妬ましくも感じてしまう。それはどんなに大事な人であっても。アオイとハルトのおかげで、ペパーの世界は広がった。真実はとてもつらいものであったが、仲間のおかげで少しずつ傷を癒している。それに単位という現実も、ある意味ペパーの傷を癒す術のひとつなのかもしれない。
「……先輩がハルに向けてる気持ちと似たようなものです」
「…………!!」
「さ、ボタンのためにサンドイッチ作りましょう! わたしも何かつまみたい!」
何事もなかったかのようにアオイは振舞う。だから、ペパーが最後の言葉の真意を探るタイミングはなくなった。アオイはボタンのためにイーブイピッグを取り出す。ペパーも気を取り直して、リーグ運営からの招集にしぶしぶ応じたボタンのために彼女が好きな食材を選ぶ。