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BleuCiel(別館)

気の赴くままに

【忍たま乱太郎】たとえそれが、【SS】

忍たま乱太郎。未来捏造(成長は組)。
きり丸。



 たとえそれが、


 忍術学園は最大の危機を迎えていた。忍が未来の忍の生命を奪う。それは誰に命じられた訳でもなく、忍が考えた末に下した結論。覚悟を持って実力者揃いの忍術学園に攻め入る。主に下級生は後方支援、上級生や先生は前線で戦っていた。もちろん、立場や得意な戦術に応じて持ち場は各自違う。忍者の卵と称されることのある生徒も、学年が上がれば上がるほどプロ顔負けの実力を持つようになる。事実、実力は拮抗していた。
 五年生になったきり丸は敵と対峙する。阿呆のは組と言われた面々は立派に成長していた。そのなかでも目立っていた一人であるきり丸は学園の門をくぐり守りたいものを守れるだけの力を、仲間を手に入れた。学園長が神妙な面持ちで宣戦布告の文を読み上げたのは数日前。原文を知っているのは忍たま、くのたまの上級生と教職員だけだ。下級生には真実は伏せられた。先に真実を知った者たちは命の奪い合いに下級生を極力巻き込ませないことを確認した。あくまでも上級生に対する実技の一環、下級生が孵化するにはあまりにも荷が重い任務だ。

「(――ッ、あぶね)」
「……今、楽にしてあげる」

 敵の忍は周囲を警戒しつつも優しい声音できり丸に語りかける。命のやりとりをしているにしては少しばかり場違いな音色があたりに響いた。きり丸はどこかで戦っている親友を思い出す。敵忍にも意志があり、それはきり丸と相容れない思惑。だからこうしてぶつかるしかない。この世に対する不平不満を肴に杯を交わす世界線もあったかもしれない、と、きり丸は少しだけ世界を呪った。敵忍は飛び道具を得意としていた。薬学に長けた親友が脳裏をよぎり、迂闊に近づけない。きり丸自身肉弾戦は好んで展開しない。事前に準備をしていても、相手のほうが一枚上手で自分の思い通りの展開に持ち込めないこともある。臨機応変に対応出来なければフリーの忍として生計を立てることは出来ない。中性的な顔立ちはバイトをする際にも任務の際にも使える道具の一つだ。そんな商売道具を傷つけることは極力避けたいのが彼の本音だった。それにそういう戦法を得意とするような肉体構造ではない。

 * * *

 最初に膝を着いたのは敵忍だった。彼はもう長くない。きり丸は敵忍を観察し、戦う術がないことを確認してから木の幹にもたれかかるように置く。

「摂津のきり丸、君はどうして戦う?」
「……あんたらの言い分もよーーーく分かるさ。でも、だからと言って忍術学園(いえ)を滅茶滅茶にされる通もねぇ!!」
「はは、結局僕たちのしたことは焼け石に水だったか」

 敵忍は力なく笑う。忍術学園の外に目を向ければ、罪のない人々が突然家を奪われ、命を落とされる事案がどこかで起きている。きり丸も、そして敵忍もその罪のない人々の一人だった。それが今では奪う立場にいる。形は違っても、ときには誰かの命を奪い誰かを悲しませている。理不尽な世界に敵忍は嫌気がさした。仕事だからと割り切ることが出来ない、かといってすべてを蓋にして普通の生活を送ることも出来ない。忍術学園卒業生の忍は優秀なことで有名だった。だったら、完全に孵る前に壊してしまえば良い。敵忍のように理不尽な世界に苦しむ忍が集まり、この日を迎えた。しかし、学園から火の手は上がらない。いつもより少し緊張が走る夜が過ぎるだけだった。きり丸は言葉を探す。いつもは口が回る彼も、この状況に合う言葉はパッと思い浮かばない。

「俺も、正直今の仕組みは変だなって思うことはあります。見つけちゃったんですよね、銭以外の宝物」


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