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BleuCiel(別館)

二次創作、時々一次創作置き場。イラストも?

【ブルードラゴン】小休止【SS】

アニメ版ブルードラゴン。一期と二期の間。
モブ視点。
クルック、アンドロポフ、シュウ。



 小休止


 クルックちゃんが野戦病院に来てしばらく経った。彼女は大人と遜色ない働きっぷりをみせる。猫の手も借りたいときに現れた救世主だ。戦いがひと区切りついても私たちの仕事は続く。私たちも人の子だ。数多の患者を診て心を病む人も出てくる。救えない命もある。時には非情にならなければいけない場合もある。手伝いで子供が来てくれることもあったが、あくまでも手伝いの範囲に収まった。
 クルックちゃんは私たちの仲間のひとりとして働き続けた。穏やかながら芯のある女の子。彼女の笑みに影が潜んでいるのは気のせいではないだろう。それ相応の理由がなければここに居続ける道理はない。彼女はまだ子供だ。いくら争いが続く世の中でも、大人の庇護のなかで過ごしてもいいはずだ。彼女はそれを良しとしない。だから私たちも仲間として対等に接する。クルックちゃんは時々建物の裏でひとり声を出さずに泣いている。見なかったことにするのが私たち大人の暗黙のルールとなった。触れられたくないことは無理に触れない。きっと彼女自身にも整理出来ていないことがある。どうしても吐き出したいときがきたら、私たちが受け止める。それが私たちがあの子に出来る精一杯。
 そんなクルックちゃんに転機が訪れた。ここに運ばれてきた人間に彼女の知り合いがいたのだ。彼女の心からの声が患者を落ち着かせる。患者の名はアンドロポフといい、クルックちゃんと仲がいい。所属先の話になると口を閉ざしてしまうので、怪我がある程度回復するまでは治療に専念してもらうことにした。ここは来た者すべて受け入れる。たとえどんな立場の者であろうと。見殺しにするのは、私たちではどうしようもならないとき。患者が大勢いると私たちが選ぶ場合もある。神様でもないただの人が命を餞別する。
 患者の数も落ち着いてきたある日、病院に見慣れない男の子がやって来た。話を聞くとクルックちゃんの知り合いらしく、彼女に用事があってここにたどり着いたらしい。仕事がひと段落し、たまたま彼女たちを見かけたので影で見守る。男の子はレジスタンス活動を始めるようで、クルックちゃんも一緒に活動してほしかったそうだ。彼は懸命に説得していたようだが、彼女は拒絶した。男の子は困惑している。決意を固めた、どこか冷たい表情のクルックちゃんは始めて見る。細かい会話は分からない。私はそっとその場を離れた。

「(……あら)」

 クルックちゃんが一人で建物の裏にいる。涙を流すこともなく、ただ虚空を見つめていた。アンドロポフ君はリハビリにでも行ったのだろうか。私はいつも通り素通りすることが出来なかった。もし泣いているのなら、立ち去ろうとも思っていた。男の子に断りを入れたときの表とも違い、今の彼女は虚無に近い。私だっていろんな人を見てきた。対処の仕方もそれなりに学んだ。私はそっと隣に立つ。

「……見てました?」
「うん。ごめんね」
「いいえ。……彼、幼馴染なんです。こんなふうに別れるなんて思ってなかったから、実感が湧かなくて」

 戦争はいろんなものを引き裂いていく。子供の頃仲良くしていた人たちとは、争いのさなかで散り散りになっていった。町は壊滅してしまったし、結局友人とは再会出来ていない。あの男の子はきっと仲間を集めて世界を駆け回るのだろう。

「彼のこと嫌いになった?」
「そんなことないです!」
「だったら、アンドロポフ君の傷が全快してからでも遅くないんじゃない? 争いが落ち着いて、彼と旅をしながらその幼馴染に会いに行くの」

 グランキングダムも壊滅したらしいし、グランキングダムの一部が立ち上げた組織がどう転んでいくのか分からないけれど、もしかしたら大きな戦争はもう来ないかもしれない。そうなる望みがわずかにでもあるのなら、永遠の別れにするにはまだ早い。前々から考えていたことを彼女に話す。クルックちゃんがいなくなるのはこちらとしては大きな痛手だが、アンドロポフ君ならきっと彼女の心の傷も癒せる。仲間として出来ることを全うする。

「また幼馴染と会うためにも、今はアンドロポフ君とゆっくり過ごすのも手だと思う」


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