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BleuCiel(別館)

気の赴くままに

【ポケモン×ブルドラ】宝物を探しに/番外編【SS】

独自設定含むポケモンSV(支部に上げている簡単SV設定)とアニメ版ブルードラゴンのクロスオーバー。
SVエリアゼロ攻略後、ブルドラ二期後。
クルック視点。
クルック、ネモ。



 宝物を探しに/番外編


 結晶が至るところに埋め込まれている洞窟はとても綺麗だ。……今あたしたちが置かれている状況さえなければ。あたしたちは犬のような生き物に追いかけられている。横目で隠れられそうな場所を探すも、ピンとくる場所が見当たらない。結晶の反射のせいで、どこに隠れてもも見つかりそうな気がしてくる。

「っていうかここどこなのよー!?」
『私も何がどうなっているのかさっぱり……』
「そうだねいつものフェニックスと見た目違うもんね!」

 あたしは走りながら、フェニックス(と思われる生き物)は羽ばたきながら正体不明の生き物から逃げる。四足歩行の黒いシュッとした犬のような生き物は、頭上に水色の結晶を煌めかせる。
 フェニックス(仮)は本来の姿より小さくなっていて、あたしを背負うことは難しそうだ。もふもふ感が増している。橙色の羽に、首周りは白いファーのようなものが巻かれている。余裕があればじっくりと観察したかった。

「っ――!!」
『クルック!!』
「ったた……」

 余計なことを考えていたら、石につまづいて転んでしまった。あたしは生き物が近づいて来るのを見ることしか出来ない。転んでしまったと同時に、恐怖で腰が抜けてしまったらしい。鋭い眼光と角のような触覚は猟犬のようで、自然と狩られる側だということを認識させる。
 フェニックスが犬のような生き物とあたしの間に入った。羽を動かして風を起こす。それは足止めになるようで、距離が縮まることはなかった。でも、フェニックスが起こした風はその場しのぎにしかならない。風がやむと再び歩み始める。警戒しているのか、一気に駆け寄ることしない。

「フェニックスだけでも逃げて!」
『ですが、』
「パーモット、《でんこうそうげき》!」

 ポニーテールの少女と、これまた新しい生き物が颯爽と現れる。頭に電球の形状をした結晶を身にまとい、大量の電気を相手に浴びせた。おかげで事なきを得る。あたしたちを追いかけていた生き物は己の不利を悟ったのか、すごすごと撤収した。撤収したとき、生き物の頭上にあった結晶は消えていた。あたしたちは一連の出来事をただ眺めるだけ。

「キミ、大丈夫?」
「助かりました。……痛っ」
『クルック』
「フェニックス、大丈夫」
「え?」

 少女は首を傾げる。何かおかしなことでもしたのだろうか。ここに来てから不思議なことばかり起こる。見たことのない場所に生き物。混乱から徐々に戻りつつあるとき、あることに気がつき青ざめる。

「(あたし、どうしてこんなところに?)」

 ここに来た経緯がまったく分からない。おそらく数時間前からの記憶が抜け落ちている。気がついたら犬のような生き物と目が合って、鬼ごっこが始まった。もしかしたら何かに巻き込まれたのかもしれない。アンドロポフに、村の子供たちに何かあったら……。

「ちょっとじっとしていてください」
「は、はい」

 少女はリュックから消毒液と包帯を取り出す。少しおぼつかない手付きで擦りむいた箇所を消毒してくれた。ただその手付きは、まったくの初心者ではない。彼女も何かに巻き込まれているのだろうか。消毒を終えた頃には腰も元通りになり、擦りむいたところの痛みはあるものの普通に歩けるようになる。
 宝石のような現象は一時的なものなのか、パーモットと呼ばれた生き物は橙色が特徴的な二足歩行の生き物になった。あたしのことを心配してくれているのか、ちらちらとこちらを見ている。こういうときこそ冷静でいないと。

「わたし、ネモって言います。テラスタルなしで挑もうとするからちょっと焦っちゃった」
「あたしクルックです。あ、あの、テラスタルって? それにこの子たちは?」
「……とりあえずここから離れようか」

 ネモさんはざっくりとここに来た経緯を説明してくれた。いまいち分からない用語もあったが、大方の雰囲気は掴めたから良しとしよう。この世界で異変が起きているらしく、彼女がその場所――この洞窟にやって来たそうだ。さっきいた子は普段よりも興奮していたようで、その生き物もあたしたちの存在に混乱していたのかもしれない。出口が見えてきた。彼女は立ち止まる。

「――クルックちゃん、ウルガモスのこと違う名前で呼んでたよね?」

 ネモさんと目が合う。その瞳は、どこか幼馴染を連想させる。今はとにかく仲間がほしい。あたしは憶測も交えながら正直に打ち明けた。彼女は茶化すことなく真剣に聞いてくれている。

「ここの人だったらポケモンを知らないなんてまずないだろうし、クルックちゃんの話信じるよ。……キミのウルガモスーーええっとフェニックスも入るかな?」
「ウルガモスでも大丈夫ですよ。そっちのほうが都合良さそうですし」
「そう言ってくれると助かるよ。はい、空のモンスターボール」

 ネモさんが出したのは赤色と白色に分かれた丸いボール。中央のボタンを押すと手のひらサイズになった。あたしはそれをひとまず受け取る。彼女は同じ形のボールをパーモットの目の前に出す。するとパーモットはそのボールのなかに入った。あたしも彼女に倣ってボールをフェニックスの前に恐る恐る差し出す。

「……出来た」
「良かった~。今日はひとまずわたしの家で休もうか」

 見知らぬ世界の景色はとても平和だった。草原のなかに洞窟が立っている。ネモさん曰くこのタイプの洞窟はいつも間にか現れていつの間にか消えているらしい。内部には《テラスタル化》した生き物――ポケモンがいて、基本的にポケモン同士を戦わせることになるそうだ。
 そんなこと知らないあたしたちはただ逃げるしか出来なかった。今のフェニックスにも戦う手段はあるそうだが、それがフェニックスにも適用されるかは分からない。ネモさんは終始明るくあたしに接してくれた。その明るさにつられてあたしも笑顔になる。不安なことは多いけれど、とりあえず今は彼女と出会えたことに感謝しよう。

「(ネモさんって……)」
「もうちょっとしたらわたしの友達も来てくれるから。あ、キミのことちゃんと受け入れてくれるから安心して!」
「「「おかえりさないませ」」」
「ただいまー。突然だけど友達と一緒に泊まるね。ペパーも来るからキッチンお願いします」

 紛れもないお嬢様だ。あたしはネモさんの後ろについて行く。ネモさんの部屋は整理されている。彼女に促されクッションを手に取って座った。おそらくポケモンをモチーフにしているのだろう。抱き心地もとてもいい。

「パーモット、出ておいで。……クルックちゃんも」
「は、はい。フェニックス」

 各々のモンスターボールからパーモットとフェニックス(ウルガモス)が出てきた。すごい、どんな技術が組み込まれているのだろう。フェニックスに異常はない。この姿であることがイレギュラーなのはこの際つっこまない。
 お手伝いさんが飲み物とお菓子を持ってきてくれた。ポケモン用のお菓子もあるらしく、パーモットは美味しそうに食べている。フェニックスは訝しげに眺めていたが、パーモットに勧められて口(……口?)に入れた。

「さっきの怪我、ちょっと見せて」
「消毒なら……」
「いいのいいの」

 人の親切を無碍にすることも出来ず、またネモさんに治療してもらった。パーモットとフェニックスは仲良くなっている。パーモットは全身を使って説明しているようだ。フェニックスが相づちを打ちながらパーモットの話を聞いている。不安なことは多いけれど、今あたしに出来ることは怪我を治すことと、ここの情報をなるべく多く入手すること。ネモさんは何を知っているだろうか。

「――お邪魔しまーす!」
「その子が困ったちゃんか?」
「あ、ハルト! ペパー!」
「こんにちは。お邪魔しています」

 あたしは二人に対してぺこりとお辞儀する。二人もお辞儀を返してくれた。自己紹介を終え、ハルトさんとペパーさんも着席する。

「アオとボタンはもうちょっとしてから来るって。いきなり黒い結晶のなかはびっくりするよな~」

 ショートヘアの少年は朗らかに笑う。片目が前髪で隠れている男性は、ネモさんに治療してもらった場所に視線を向ける。あたしはそっと隠した。各々のモンスターボールからポケモンたちが出てくる。部屋は広いので、ある程度のポケモンが出てきても大丈夫そうだ。あたしは視線を泳がす。怪我自体は大したことない。ネモさんの消毒で充分のはずだ。

「……さすがにポケモンバトルはまずい?」
「さすがにねー」
「…………。おれらにも詳しい話いいか?」

 ペパーさんが明らかに動揺していた。お菓子と飲み物が追加され、残りの人たちが来るまでネモさんに話したこととほぼ同じことを話す。ただ、フェニックスのことはなんとなく切り出せない。
 それでもペパーさんもハルトさんもあたしの突拍子のない話を信用してくれている。ネモさんといい、それに値する何かを経験したのだろうか。あたしは仲間が増えていくことに安堵する。

「こんにちはー!」
「……ども」

 残りの二人だろうか。彼女たちと挨拶を交わし、お互いに自己紹介をする。これでネモさんが招集した仲間は全員揃ったようだ。大人しそうな子――ボタンさんパソコンを取り出す。そこには彼女が集めたであろう資料が集積されていた。


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