※彩斗設定有。
アニメ版ロックマンエグゼ。
ロール視点。
ロックマン×ロール。
機械人形(ネットナビ)は夢を見る
『…………』
ワタシはネットナビだ。オペレーターであるメイルちゃんの補助をするためのデータの塊。だからオペレーターと同じような言動をしていても、しょせんワタシたち――ネットナビはそういうプログラムを組まれているに過ぎない。メイルちゃんが寂しくないように、そして、熱斗さんのネットナビであるロックマンと共に二人を見守るように設定されている。ロックマンに異性として好意を持っているのは、きっとそういうふうにプログラムされているから。熱斗さんのネットナビと仲が悪かったら二人を見守ることが難しいでしょう? ワタシがメイルちゃんのところに来たときにはまだロックマンはいなかったけれど、メイルちゃんの両親は熱斗さんにネットナビが与えられることを見越してワタシを創った。
『(すべてが作り物?)』
それは、考えてはいけないこと。きっと思考回路がオーバーヒートを起こしちゃう。手を伸ばしても決して届かない場所にあるそれは、ワタシたちネットナビには存在しないもの。そのせいでロックマン――彩斗さんに嫉妬する不具合が起きている。そういう思考回路は組み込まれていないはずなのに。熱斗さんの亡くなったお兄さんの遺伝子データを組み込んだ特別なネットナビ――ロックマンはワタシの好きなヒト。だから嫉妬することはあってもそれはニンゲンでもよくあるような可愛いもの。ワタシがロックマンときどきしている嫉妬も可愛いものだろう。彩斗さんへの感情はそんな可愛い嫉妬ではない。
『ロールちゃん、ここにいたんだ』
『ロックマン』
彼のことで考え事をしていたら、都合良く彼が現れた。ワタシは冷たい反応を取ってしまう。メイルちゃんにちょっとした用事を頼まれていた。用事自体はすぐに終わった。ワタシが勝手にこうして一人で黄昏ているだけだ。ワタシがなかなか戻らないから、たまたま熱斗さんと一緒にいてその流れでロックマンがワタシを探しに来たのだろう。ネットナビとしてはすぐに戻るべきなのだろう。ただ、ワタシはちょっと意地悪がしたくなった。それはネットナビにとってはきっと無意味な行為だ。
『ねえロックマン、もし熱斗さんとワタシどっちかしか助けられないってなったらどっちを選ぶ?』
ネットナビとして、そして兄として当然熱斗さんを選ぶ。ワタシたちネットナビはオペレーターを支えるために存在しているのだから。本当に無意味で、愚問に近い問い。ロックマンは笑う。これは返答に困っているときの笑いだ。いくら朴念仁なロックマンでもワタシが望んでいる答えは察しているだろう。