アニメ版ロックマンエグゼ。
メイル視点。
桃組。
その手の行方は
インターネットにも現実世界にも押し寄せるウイルスの群れ。出現があまりにも突然で、たまたまインターネットに出かけていたロールは戻ってこない。ロールについて行ったラッシュもここにはいない。きっとロックマンも心配だっただろうに、彼は熱斗と一緒に現実世界を守る。ディメンショナルエリアが展開され、クロスフュージョンした熱斗とロックマンは現実世界に出現したウイルスの群れに飛び込む。わたしがいくら手を伸ばしても、熱斗たちには届かない。
「行かないでっ……!」
悪夢から目が覚める。わたしは実際に手を伸ばしていた。ロールや熱斗たちがいない世界なんて、考えられない。夢だと分かっていても、妙にリアルな夢ですっかり目が覚めた。時計を見ると、起きるにはまだ早い時間だった。でももう一度瞳を閉じることが怖くて、わたしはロールを呼んだ。わたしの大事な家族。ロールは時間を確認してわたしの顔を覗き込む。この時間はまだ寝ているはずだから、わたしの体調を気にしてくれているのだろう。この様子だとラッシュにも異常ないのかな。すぐどこかに行っちゃう、あまりにも自由な家族。
『メイルちゃん、どうしたの?』
「夢、見たんだ」
『夢?』
わたしは夢の内容を簡単に話した。わたしの周りからみんながいなくなる悪夢。ロールはわたしの手に触れる。ホログラムだから温度はない。けれど、ロールの小さな手はなぜか温かい。悪夢と違って、伸ばした手は空を切らなかった。安心したのか睡魔がわたしを襲う。でも、まだ現実を見ていたい。本能に抗うわたしをロールが諭す。
『メイルちゃん、ちゃんと寝ないと今日も学校でしょ?』
「ロール、ロックマンみたい」
『メイルちゃんってば……!』
ロールは赤面する。お姉ちゃんみたいな、友達みたいな、一言で言い表せられない大事な存在。いつか体を張ってわたしを守ってくれたように、わたしもロールの為なら体を張って守ってみせる。