※彩斗設定有。
アニメ版ロックマンエグゼ。
ロックマン視点。
ロックマン×ロール。
青組、桃組、光夫婦。
タイトルはつっこさんの曲より。
『NOISE』
些細なバグとして現れた異変は、徐々にボクの身体を蝕んでいく。熱斗くんが慌てて科学省に駆け込んだときには、もうどうしようもないところまで来ていた。彩斗だった頃の病気が、長年の時を経てロックマンとしてのデータに侵食してきたのかもしれない。熱斗くんには、みんなには余計な心配をかけさせたくなかったから我慢していたけれど。一人の例外を除いて。
『――彩斗兄さん!!』
熱斗が《ぼく》の名前を呼ぶ。ネットナビとして、兄として、熱斗のことを見守ることが出来て幸せだった。危ないこともたくさんしたけれど、熱斗と一緒だったから立ち向かうことが出来た。
『――今度は死なせない』
『――彩斗……』
パパ、《ぼく》をネットナビとして熱斗のそばに置いてくれてありがとう。ママ、ネットナビになっても《ぼく》を見守ってくれてありがとう。
『――彩斗お兄さんっ』
メイルちゃんは可愛い妹のような存在だった。《ぼく》の分までこれからも熱斗のそばにいてほしい。
「(ロールちゃん怒ってるだろうな……)」
異変を自覚し始めた頃からひっそりと自分でリカバリーしたり、密かにロールちゃんにもリカバリーしてもらっていた。彼女は回復系が得意なネットナビだったから、ボクが自分でリカバリーするよりも効果がある。それでも、彼女自身の行為が延命措置に過ぎないことを分かっていた。ボクがぎりぎりまで科学省に行かないことを悟ったのか、いつからか文句も言わずボクを回復してくれた。
どこにいるのか、ロールちゃんの声は聞こえない。一番感謝したい人がそばにいない。後悔はしないつもりでいたのに、このまま逝くことがひどく惜しい。
『彩斗兄さんの馬鹿野郎ッ』
「…………!?」
誰かが《ぼく》の頭を殴ったような気がする。それに熱斗の声が鮮明に聞こえた。何が起こったのか分からない。
『ロールに散々世話になって……こんなのって……!!』
うん、そうだね。ロールちゃんにはお世話になった。普段はボクが熱斗に注意していることが多いのに、今ではすっかり立場が逆転している。そんなことを考えていると、手を引っ張られる。力強くて温かい手だった。振り払うことも出来ず、流れに身を任せる。
――結果、ボクは奇跡的に回復した。熱斗くんがだいぶ無茶をしたらしく、パパは生きた心地がしなかったと顔面蒼白になりながら話していた。彩斗の頃に患った病気はネットナビになった今でも影を落としているらしく、定期的に特殊なチェックをしないといけないらしい。
『ロックマン、大丈夫か?』
「本当に大丈夫」
あのときロールちゃんはボクの最期を見るのが怖くて別の場所にいたらしい。彼女にも大きな負荷をかけさせていた。事情を聞いたメイルちゃんがパパにロールちゃんのチェックをお願いしたところ、所々異常なところが見つかったらしい。ボクと熱斗くんはロールちゃんとメイルちゃんに菓子折りを持って詫びにいった。