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BleuCiel(別館)

気の赴くままに

【ロックマンエグゼ】戦乙女【SS】

アニメ版ロックマンエグゼ。本編後。
桃組、熱斗、炎山。



 戦乙女
 ――まるで花びらが舞っているようだった。


 人間がいる限り、インターネットが普及している限りネット犯罪は絶えない。ネットセイバーである熱斗と炎山は具現化したネットナビに対してクロスフュージョンを用いて戦っていた。そのネットナビは現実世界にウイルスを送り込んでいる。逃げ惑う人々のなかで、ウイルスの集団を見据える少女がいた。

「ロール、いくわよ」
『ええ!』
「シンクロチップ、スロットイン!」

 かつてラッシュシンクロチップを用いてクロスフュージョンしていた少女――桜井メイルはシンクロチップを用いてクロスフュージョン出来るようになっていた。本来一般人にシンクロチップは渡さないようにしている。しかし、メイルの人となりを知っている祐一朗や名人が許可した。時にはまるで実の娘のように見守っていた祐一朗は、これ以上メイルが危ない橋を渡ってほしくない気持ちもあった。しかし、メイルの熱意に圧されて祐一朗は渡すことを決意する。主に炎山がネットバトルの指導をして、メイルはネットバトラーとして成長する。熱斗や炎山までとはいかないが、それなりのレベルまで到達した。クロスフュージョンロールは人に危害を加えそうなウイルスを先に倒していく。同時に、攻撃に巻き込まれそうな一般人を安全な場所まで避難させる。なるべく早く状況を把握して、自分の最善の手法を取るように常に考える。炎山の指導の賜物だった。熱斗と炎山が今回の事件の黒幕であるネットナビを倒し、ディメンショナルエリアが解除された。PETをキャッチしたメイルは深呼吸する。すると、小さな男の子がメイルに声をかけた。

「おねーちゃんありがとう!」
「ど、どういたしまして」
『さ、科学省へ行きましょう』
「ラッシュにも今度お礼を言わなきゃね」

 男の子は母親の元へ駆けていく。母親も遠くでメイルにお辞儀をした。メイルも男の子の母親に、そして手を振っている男の子に向かってお辞儀をして科学省へ向かった。シンクロチップを使って初めての実戦だったため、念のために検査してもらうことになっている。検査をしたが異常は見当たらなかった。ひと通り報告を終えると、祐一朗は科学者から親の顔になる。海外にいることの多い桜井夫婦に代わって、光夫婦(主にはる香だが)がメイルの面倒を見ていた。熱斗の双子の兄である彩斗が病気でこの世を去ったとき、はる香は熱斗とメイルの成長を見届けることで悲しみを乗り越えようとしていた。見兼ねた祐一朗が月日をかけ彩斗をロックマンとして転生させたが、光兄弟の第二の人生も前途多難だった。

「メイルちゃん、ロール、くれぐれも無茶はしないでほしい」
「わたしだって熱斗や彩斗お兄さんにいなくなってほしくないんです。それに、おじさまやおばさまが悲しいとわたしも悲しくなっちゃうから……」
『ワタシだって誰もいなくなってほしくないんです。ネットナビがそういうのは変かもしれないけど……でも、ワタシもメイルちゃんと同じ気持ちです!』

 オペレーターの意見にただ同調するだけでなく、ロールとしてもメイルと同じ意見であることを告げた。祐一朗は首を横に振る。祐一朗にとって息子――熱斗と彩斗(ロックマン)はもちろん大切な存在だ。身を挺してでも守るべき唯一無二の大切な子供。そして目の前の少女たちだって、祐一朗にとって我が子に等しい存在だった。

「熱斗や彩斗だけじゃない。メイルちゃんやロールだっていなくなっては駄目なんだ」
「……わたしたち、も?」

 メイルは首を傾げた。

 * * *

 炎山とばったり会った熱斗とメイルはそのまま三人で出かけることになった。友人とのひと時を楽しんでいると、熱斗と炎山のPETに連絡が入った。二人の表情が真剣なものになる。その直後に爆発音が響いた。ディメンショナルエリアが展開されて、一気に戦闘態勢に入る。熱斗はシンクロチップを用意しつつ、メイルに下がるよう指示する。炎山は何も言わない。彼女を決意を知っている彼は何も言えなかった。メイルは祐一朗から貰った、ラッシュの気持ちも入っているシンクロチップを用意する。彼女用にカスタマイズされ、ロールのナビマークが施されていた。彼女だけの、特別なシンクロチップ。

「メイルちゃんは下がって、て……?」
「熱斗、わたしたちだってシンクロ率高いこと忘れてない?」


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