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BleuCiel(別館)

二次創作、時々一次創作置き場。イラストも?

【ロックマンエグゼ×ひぐらしのなく頃に】【SS】

※死ネタ、流血描写有。
ひぐらしのなく頃にとアニメ版ロックマンエグゼのクロスオーバー。
夏美、青組、桃組、炎山。

…どうしてこうなった?




「「!!??」」

 ネットセイバーとして敵と戦っていた熱斗と、たまたまそれに巻き込まれていたメイルは敵の仕掛けた罠に引っかかった。ブラックホールのようなモノに吸い込まれた先は、見慣れない街並みだった。二人はナビにここの情報を聞く。しかし、

『駄目だ熱斗くん。ここの情報が見つからない』
『電波も圏外みたいなの』
「「ええ……」」

 二人は顔を見合わせた。が、普通の子供では経験しないようなことも経験済みの二人は必要以上にパニックにはならなかった。PETの機能がほぼ意味を成してないことを除けば、ある意味まだ理解出来る光景に安心している。

「あのー、どうかしました?」

 緑髪の少女が二人に話し掛ける。二人は咄嗟にPETを隠した。周りにPETらしき機械を持っている人がいないこと、またPETの機能が制限されているとなるといつものように使う訳にはいかないと考えた。どう説明するか考えていると、少女は申し訳なさそうな表情を浮かべる。

「あ、ごめんなさい。もしかして邪魔しました?」
「「え?」」
「そのー、デート、とか……?」
「「ええーーー!?」」

 少女は勘違いした。熱斗は盛大に首を横に振る。そんな熱斗を見て面白くないメイルは熱斗を叩く。結局どっちなんだろうと少女は首を傾げた。このままでは埒が明かない、メイルは少女が目敏くないことを期待して本当のことを言える範囲で話す。

「わたしたち初めてここに来て……ここの街を案内してもらえますか?」
「わたしでも良かったら。あ、わたし公由夏美って言います」

 夏美は微笑んだ。熱斗もメイルも自己紹介をして、早速探索に出掛ける。昼食は制服が特徴的なファミレスに寄る。二人はこの世界のお金を持っておらず、お姉さんぶりたい夏美が奮発した。
 熱斗たちは元の世界へ帰る手段を見付けた。この世界に迷い込んでからたびたびお世話になった夏美に挨拶しようと、二人は彼女を捜した。
 夏美の知人から彼女の様子がどこかおかしいというのを聞いて、近頃夏美とあまり合わなくなった二人は最後にお礼を兼ねて夏美を元気付けようとした。夏美がここに来てまだ日が浅く、どこか馴染みきれていない節があることを二人は感じ取っていた。

「夏美さん!」

 夏美は人通りが少ない公園で空を眺めていた。メイルが声を掛ける。

「……メイルちゃん。熱斗君も」

 夏美の表情は昏い。初めて出会ったときと違う雰囲気に二人は戸惑った。ここ数日で夏美を取り巻く環境が大きく変化した。血なまぐさい事件が多発し、夏美の言動も時折攻撃的になる。熱斗が言葉を紡ごうとした瞬間、夏美が口を開いた。

「わたしは普通の幸せが欲しかっただけなの。みんなが悪いんだ。わたしの幸せを邪魔するから」
「「…………」」
「アナタたちはワタシのトモダチだよね?」
「っぁ」

 夏美はメイルの首を絞める。彼女は嗤っていた。突然のことに一瞬固まった熱斗だったが、メイルの危機を悟って夏美に体当たりする。ケタケタと嗤う夏美は起き上がり鞄に入れていた包丁を熱斗の脇腹に刺す。

『熱斗くん!!』

 PETからロックマンが叫ぶ。初めてネットナビの声を聞いた夏美は熱斗を睨み付けた。その表情は鬼のようで、雛見沢村という村の噂を思い出す。包丁を抜き、今度は熱斗の足に刺す。今の夏美にロックマン……ネットナビという彼女にとって未知の存在はは刺激が強過ぎる。熱斗のところに向かおうとするメイルの腕を掴んだ。骨が悲鳴を上げている。熱斗から距離を取り、夏美が表情を和らげる。しかし、瞳に光は戻らない。

「メイルちゃん言ってたよね? ワタシのキモチ分かってくれるって。ワタシ、嬉しかった。もちろん熱斗君のこと弟が出来たみたいでそれはそれで嬉しかったの! ワタシもう滅茶苦茶なのヒトリボッチなのだから二人とも一緒だよ! ね!?」

 夏美の豹変にメイルは返事をすることが出来ない。PETの中でロールが息を殺している。外の様子が見るとこが出来なくても、ロックマンと熱斗の声を聞いて声を出してはいけないことを理解した。今の夏美は正常ではない。この世界の誰かが助けに来てくれることを祈る。メイルは声を絞り出す。喉がカラカラだった。お別れを言いに来たつもりだったのに、こんな状況で言い出せる訳がない。

「夏美さん……落ち着いて……」
「メイルちゃんも熱斗君もトモダチだよね!? イッショだよね!?」
「もちろん……友達……っ」

 夏美はメイルに覆い被さる。再び夏美の指がメイルの首筋をなぞる。熱斗ほどではないが、メイルも危ない橋を渡ってきた。今の夏美は今まで対峙してきたどの敵よりも危険だ、と脳内で警鐘を鳴らしている。

「だったらイッショにシノウ? ……ッ!?」

 夏美は微笑む。彼女が気を許した一瞬、メイルは渾身の力で彼女を突き飛ばした。メイルは呼吸を整える。夏美は自分の首筋に爪を立てた。それは肉を剥ぎ、鮮血をチラつかせる。予測不能な夏美の行動にメイルは慌てた。震える足に喝を入れ、突き飛ばした夏美に近寄る。

「夏美さんっ」
「結局ヒトリボッチ……アハハハハ!!」
「違う……だからお願い……やめて……」
「ワタシがオニだからあ!? オニなんかとトモダチになれる訳ないよねえ!?」

 メイルは手を伸ばす。夏美は呪詛の言葉を吐きながら首を掻く。太い血管を裂いてしまったのか、一気に血飛沫が舞った。メイルの顔にも鮮血が飛び散った。空気の音が混ざり最早何を言っているのか分からない状態でも、夏美は話し続ける。

「…………」
「夏美……さん……?」

 見開かれた夏美の目はメイルを射る。メイルは動けなかった。呼吸も上手く出来ない。熱斗が足を引きずりながら彼女たちのところに向かう。警察が来たときには夏美の身体は冷たくなっていた。オヤシロ様の祟りに関する一連の事件を調べていた刑事は己の無力さに唇を噛む。

 * * *

 かつて行ったことのある世界とはまた違う世界に飛ばされた熱斗と桜井は心に深い傷を負った。特に桜井は顕著だ。常に遠くを見つめて、俺たちの言葉に滅多に反応を示さない。熱斗はカウンセリングやロックマンの協力でいつものペースを取り戻しつつある。少なくとも表面上は。

「桜井、」
「鬼さんこちら手の鳴る方へ」

 桜井の心は壊れたままだ。熱斗が見た映像を少し覗いてみたが、凄惨な現場だった。目の前で自害する瞬間を目撃した桜井の心が砕けたのは致し方ない。桜井は日によって見ているものが違う。今日は誰かと鬼ごっこでもしているのだろうか。見えない壁はどこまでも分厚い。


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