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BleuCiel(別館)

二次創作、時々一次創作置き場。イラストも?

【ブルードラゴン】今はこのままで【SS】

アニメ版ブルードラゴン。一期。
ゾラ一行。



 今はこのままで


「やっと町に着いたー!」
 ブーケの声が弾む。無理もない、ここ数日は街にたどり着けず野宿が基本、小さな集落では宿がなく最低限の場所を間借りしている状態だった。川辺で水浴びをしていたものの、一刻も早くお風呂に入りたい。ブーケだけでなく、ほかの子供たちも感じていた。ゾラも子供たちの心中を察し、はしゃぐブーケを窘めることはしない。
「ゾラ、早く宿に行きましょうよ~!」
「分かったからあまり急かすな」
 マルマロは街の人たちを観察する。マルマロの手がお乳様に伸びる前に、クルックがマルマロの手を掴む。半ば引ずるようにマルマロを連れて歩くクルック、それを見て苦笑するシュウに我関せずのジーロ。賑やかな集団は街中を行進する。無事宿に着いた一行は夕刻まで自由行動となった。
 この日は敵襲もなく、各々久方ぶりの街を満喫していた。マルマロの場合、行動に移す前に誰かに先手を取られていたが。ブーケとクルックはゾラを引き連れてウインドウショッピングへと向かう。ブーケをメインにどんなアクセサリーが似合うか、服が似合うか、話しながら散策する。
「ゾラもドレス似合うと思うんだけどな~。ねー、クルック」
「確かに。でも旅してると機会がねぇ……」
「興味ない」
「「えぇー」」
 ブーケとクルックの声がハモった。ゾラの要望で武器屋に立ち寄る。ブーケは散々自分のやりたいことをやったことは薄々自覚していたので、強く反対は出来ない。クルックは機械仕掛けの武器を見て瞳を輝かせていた。己の武器に転用出来るかじっくり観察する。ブーケはゾラの近くに行ったり、クルックの近くに行ったり。
 一方の男性陣はウインドウショッピングをする訳でもなく、ただただ街を散策していた。それも飽きて、宿に戻って体を動かす。人目がある場所で何もないのに影は出せないので、己の肉体を鍛え、万が一のときに備える。
 夜でも日中ほどではないが賑やかだ。野宿のあいだはほぼほぼ音がしなかった。その代わり異様に目立つ音もある。ゾラやジーロ、ときにクルックもあたりを警戒しながら夜を過ごしていた。安心出来る、はずだった。
「…………」
「シュウ?」
「あ、クルック」
 シュウはベッドから出て夜空を眺めていた。体は確かに疲れている。事実、消灯してすぐに寝息を立てた。しかし、その後が問題だった。シュウは悪夢を見て目を覚ます。細かい内容は覚えていないが、みんながいることに酷く安心した。クルックも悪夢を見て目が冴えてしまった。シュウの隣で夜空を眺める。
「……星、綺麗ね」
「あぁ。なぁクルック、オレら幸せ者だよな」
「突然どうしたの?」
 クルックはとっさにシュウの手を握る。彼女の手は震えていた。夜とはいえ震えるほど寒くはない。震えの根源は負の感情からだ。遠くに行かないように、繋ぎとめるかのように、シュウもクルックの手を握り返す。どちらの手が震えているか分からない。
「悲しいこともあったけど、仲間とこうして旅をするって楽しいと思ってさ」
「あたしも。だから怖いの」
「んだな」
 夢の内容は覚えていない。ただ、目が覚めたときにみんながいるという事実に、シュウと同じように安堵した。それでも不安な気持ちは完全になくならず、シュウの手を握って存在を確かめる。二人とも手を離さない。立ちっぱなしも疲れ、壁際にもたれかかりお互いの体温を感じながら仲間たちを見る。
 翌朝、ブーケの悲鳴のような声が目覚まし時計代わりになったそうな。布団に包まれていたマルマロから顰蹙を買い、外で体を動かしていたジーロとゾラは想像通りの反応に安心感すら覚えてしまった。
「体を痛めてなければ良いが」
「にしてもブーケも相変わらずだな……外まで聞こえたぞ……」
 ゾラとジーロは、外に出る際に壁に寄りかかりながらも寝ている二人を見かけた。ジーロは布団に戻したほうが良いのではないかとゾラに問うが、手を握り寄り添うようにして寝る二人を引き離すのもはばかられた。結果毛布をそっとかけてから、彼女たちは外で鍛錬を始めた。


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