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BleuCiel(別館)

二次創作、時々一次創作置き場。イラストも?

【ポケットモンスター】めりくり!2023【SS】

※V基準で双子主。
ポケモンSV。本編後。
アオイ(女主人公)、ハルト(男主人公)、ネモ、ボタン、ペパー。



 めりくり!2023


 世界中のデリバードが忙しくなる頃、冬休みを利用して実家に帰っているアオイとハルトは部屋で好きなように行動していた。学校からの課せられた宿題はアオイとネモが先頭となり大部分を済ませている。
「ハルー、プレゼント決めたー?」
「分かって言ってるだろ……」
「だって一緒に買いに行ったし」
 冬休みの間にクリスマス会をしようということになり、先日二人はハッコウシティでクリスマスプレゼントに関しての情報収集、そしてピンとくる物があったら購入した。二人共、パルデア地方での初めてのクリスマス会に早くもワクワクしている。家族以外の人――友人とパーティーを開くのは初めての経験だった。苦楽を共にしたポケモンへのプレゼントも買う。そのプレゼントも二人の個性が良く出ていた。
「別に物に拘らなくてもいいんじゃない? ハル、わたしに対してのプレゼント決まってなかったらちょっと相談があるんだけど」
「んだよー」
 アオイは読んでいた雑誌を閉じる。ハルトも視聴していたバトルが決着し画面を閉じた。アオイはハルトにしか出来ないネモへの最高のプレゼントを提案する。それを聞いた彼は顔をパッと綻ばせた。物に拘っていたハルトとって、彼女の提案は目からウロコだった。二人は目を合わせ白い歯を見せる。

 * * *

 事前の打ち合わせにより、クリスマス会はネモが場所を提供することになっていた。誰も邪魔が入らない、なおかつ全員のポケモンがボールから出ても窮屈にならない広さを兼ね備えている。空調も完璧で、極端に暑かったり寒かったりしない。バトル好きの果てに《ネモい》とまで言われる彼女も、いいとこのお嬢様なのだ。そんな現実をひょんなことで思い出す。
 食料を各々で持ち寄ったり、ペパー主導でご馳走の仕込みをしたり、笑顔と会話が絶えることはない。ポケモンたちも伸び伸びと過ごしている。積極的にほかのポケモンに関わるコもいれば、一歩離れた場所で見守っているコもいる。
「料理って奥深いんだねー」
「ネモは料理になると雑になるな?」
「ははは……」
 ボタンのつっこみにネモは苦笑いを浮かべる。ネモは生まれてこのかた自炊をするという経験がほとんどない。寮生活でも購買はあるし、テーブルシティも学生にも優しい金額で提供するご飯処も多い。時々ポケモンたちのためにポケモンフーズをアレンジするが、そのときも目分量が多い。嫌がってはいないので、ネモはこのままでいいかと思っている。
 夕食用の料理も下ごしらえが終わり、いったん休憩に入る。間食としてボタンが持ち込んだロシアンルーレット式のお菓子を五人で食べた。見事当たりを引いたアオイの表情が見物だったらしく、ハルトは腹を抱えて笑っていた。アオイとハルトが落ち着いた頃に、二人が持ち寄ったトランプで勝負をした。地頭が必要とするゲームとなると、途端にハルトとペパーが弱くなる。ボタンも自分のなかで上手い具合に方程式が見つからないときは、ハルトとペパーと共にアオイとネモの決勝戦を見守る。ロシアンルーレットの件もあり、アオイはハルトに対して容赦がなかった。心理戦まで仕掛けてくる。
 トランプもひと段落し、再び夕食を作る。豪華なディナーが出来上がった。もちろんロシアンルーレット式の料理は作っていない。ポケモン用のご飯も出来上がり、ミライドンが嬉しそうに鳴いた。ボタンがわずかに肩をびくりと震わせる。
「ご馳走様でした!!」
 五人は手を合わせ食事を終える。ペパーにとっては遠い昔の団欒の時間を再び味わえたことに歓心する。あらかた片付けて、プレゼント交換をする。それぞれ個性が出るプレゼントを用意していた。ボタンは「ちゃんと買った」と一言添えて。さっそくプレゼントを開封したり、あとの楽しみにしたり、食事のときとは別ベクトルで盛り上がっている。
 ポケモンたちも物はなくともお互いに会話をしたり、会場が滅茶苦茶にならない技を繰り出したり、わざわざBGMを用意しなくても良いぐらいに賑やかだった。特にアオイのポケモンは持ち主の影響でみんなに技を魅せていく。
「ハルトはネモに渡した……?」
「ボタン、ハルはとっておきのプレゼント用意してるからっ」
 アオイは得意気にウインクをする。彼女の一言でボタンもペパーも察した。ネモもなんとなく予想しつつも、ハルトからの言葉を待つ。ネモとしては、友達が考えて選んでくれたものならなんでも嬉しい。それでも、ハルトの場合少し欲が出る。彼は一点の曇りもない瞳でネモに告げる。
「物じゃないけど、オレとの真剣勝負はどう?」
「最っ高!! いつするの!?」
「ちなみにわたしは、ハルに二人の勝負をわたしとボタンとペパー先輩だけで見る権利をもらいました!」
「「え」」
 アオイの不意打ちが華麗に決まり、ボタンとペパーは声をそろえる。いたずらっぽく笑う彼女はいつもより幼く見えた。二人とて、パルデア地方でトップクラスのポケモンバトルを見ることは嫌いではない。ただ突然矛先が向き驚いただけだ。ネモはポケモンの構成を呟いている。ネモの《ネモい》部分がいかんなく発揮されているあいだ、残りの四人で日時を話し合う。準備を含め、明後日はどうかとネモに提案する。彼女は二つ返事で了解した。
 ネモにとって、ハルトとのポケモンバトルはやっと見つけた大切な宝物のひとつだ。それを仲間の前で披露出来ることに、彼女の胸が高鳴る。ハルトも同じ気持ちだ。新しい土地に馴染めるか不安で、何より大好きなポケモンバトルがパルデア地方ではどことなく控えめな印象を受けた。
 そんなハルトの不安を吹き飛ばしてくれたのがネモだった。ライバルになると予感した彼はあっという間にネモと同じ場所まで上りつめた。それは自身の実力と、ネモという最高のライバル、そしてなんだかんだハルトの旅路に付き合ったアオイが支えてくれたから。
「……お風呂、どこなん?」
「え? ……あ、そうだね!」
 すっかり上の空になっていたネモをボタンが呼び戻す。ネモはバトルモードから切り替えた。女子組と男子組に分かれて入り、お風呂が好きなポケモンもトレーナーについて行く。待機組の宴会は終わる気配がない。夜はまだまだ続く。たまには少しぐらいハメを外したって誰も怒らない。ここには注意する大人がいないのだから。
 一匹の色違いデリバードが会場となっている建物の前を通る。建物のほうを数秒見つめ、羽ばたいていく。なかの状況を知ってか知らずか、わずかに表情を緩める。今この瞬間も、彼らにとっては最高のプレゼントなのかもしれない。

――子供たちに幸あれ!!


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