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BleuCiel(別館)

気の赴くままに

【ボーボボ】Con anima*1【SS】

emoji20241124修正(※サイレント修正有)
続きもの
ほんのり!どんぱっち。
ビュティ、首領パッチ、破天荒。



 Con anima*1


 ――やったー! 〈    〉、首領パッチ君!
「(……あの人、誰なんだろう)」
 ビュティは夕ご飯の支度をしながら、昨晩見た夢のことを考えていた。考え事をしながらも夕ご飯は着実にできていく。
 夢のなかではアフロの男性と首領パッチがふざけながら敵らしき男性と戦い、ビュティは珍妙な技を披露するアフロと首領パッチにつっこんでいた。敵は自分のペースを崩されてそのままやられてしまう。バトルの最中は容赦のないつっこみを入れていたビュティも敵の撃破時には素直に喜んだ。
 夢のなかの彼女の服装は見慣れないものだった。へそ出しは羞恥心が勝り人前ではさらせない。カラオケボックスのなかですら友人の前で声を出して歌うことができない彼女には難易度が高い。
「(それにしてもあんなにふざけてる首領パッチ君は初めて見たかも)」
 その首領パッチは最近こちらの世界にやって来た破天荒とともに外に出ている。夕食は首領パッチと二人で食べることが多かったが、破天荒が来てからは破天荒も加えて三人で食べることが増えた。おそらく今日も三人で食べることになるだろう。
 破天荒はときどきヘッポコ丸が仲介役となりアルバイトをしている。彼は首領パッチがいるこちらの世界に馴染もうとしていた。首領パッチのことで好敵手として見なされることもあるが基本的にビュティと破天荒の仲は悪くない。
「……うん、いい感じ♪」
 味見をして時間を確認する。彼らがこの家に戻ってくるのはまだ先だ。ビュティは火の元を確認して台所から離れた。自分の部屋に行き、ノートを開く。勉強用とは違う日記兼自由帳はお気に入りのシールや友人と撮ったプリクラも貼っている。
 兄が自分の進路を決めた頃から彼女はこのノートに日々の出来事を書きつづった。兄が恋しくなったときに見返してそのときのことを思い出せるように。
兄が遠くに行ってからは兄への手紙にその出来事を書けるように、友人たちとのささいな出来事もノートを見たら追想できるように。彼女はノートと向かい合う。
「なんか違う」
 ビュティは首を傾げる。悲しいことに、夢で見た光景にビュティの画力が追い付かない。消しゴムで消してシャーペンで描いてを繰り返していると横に橙色のトゲトゲが見えた。彼女ははっとする。
 彼女は夢中でノートに書きこんでいた。時間を忘れていた。ノートを勢い良く閉じて椅子から立つ。ノートの内容を首領パッチに見られた訳でもないが彼女の表情は硬い。
「破天荒が下で待ってるぜー」
「呼んできてくれてありがとう。行こっか」
「マカロニーマカロンー」
「何それ。たしかに似てるけど」
 首領パッチは自作の歌のような何かを口ずさみながら人間用に設計された階段をスイスイと下りる。ビュティはそんな首領パッチに相づちを打つ。
 破天荒は分かる範囲で夕食の準備をしていた。首領パッチと再会した日に作った料理はビュティ曰く《漢の料理》だったが、落ち着いた状態では彼女の代わりに腕を振るうこともある。
「嬢ちゃん邪魔してるぜ」
「破天荒さん、準備してくれてありがとうございます」
「おやびんもオレも腹が減ってるんで」
 破天荒のビュティに対するそっけない対応も慣れたものだ。むしろそれが平常運転で、首領パッチだけが特別なのだと知ってからは彼女も安心して破天荒と会話をする。そもそも、破天荒はビュティに対して本当に冷たく接している訳ではない。
 この世界に来てからは敵襲に遭うことも自ら適地に乗り込むこともしないが、破天荒なりにビュティのことを仲間だと認識している。彼女と首領パッチの関係を確認して彼女のことをある程度認めていた。
 首領パッチから紹介されたヘッポコ丸のこともアルバイトの先輩としてこの世界の住人ではビュティの次に関わっている。ヘッポコ丸の首領パッチへの対応の仕方に怒りをあらわにするときもあるが、破天荒はヘッポコ丸のことを邪険に扱え切れない。
「そういえばへっくんのお手伝いでしたっけ? 破天荒さんがいるとへっくんの仕事がなくなっちゃうかも」
「オレは構わねぇけど」
 ビュティは破天荒と会話しながら仕上げに入る。首領パッチは椅子に座って目を輝かせていた。彼女の世界は首領パッチを通じて広がっていく。首領パッチと破天荒がたまに話すハジケた日々は夕ご飯の花を添える。
「「「いただきます」」」
 ご飯が冷めないうちに、三人は手を合わせた。この日の話題は首領パッチと破天荒が今日経験した出来事だ。破天荒の首領パッチ愛は破天荒を知る者なら周知の事実になっている。
 首領パッチのことを雑に扱うこともあるヘッポコ丸とは険悪な雰囲気にもなるが、そんな雰囲気を作る元凶でもある首領パッチがうまい具合に手綱を引く。
「破天荒さん、おいしくないですか?」
「い、いや、そういう訳じゃ……」
 破天荒がビュティをちらちらと見る。最初は小さな点だった。それは日に日に大きくなり、無視できないものとなって彼のなかにいる。――忽然と消えてしまう。それは首領パッチだけなのか。
「(そういう考えはなしだ)」
 破天荒は心のなかでかぶりをふる。違和感に気を取られて首領パッチと食べるご馳走が台無しになるところだった。ビュティは首を傾げるが味に文句がある訳ではないようなので食事を再開する。
「「「ごちそうさまでした」」」
 食器を片付けながらビュティは二人に兄が来ることを伝える。目まぐるしく変わる日常で報告するのを忘れそうになっていた。何度か対面している首領パッチはともかく、破天荒には事前に伝えておかないと首領パッチ関連でひと波乱が起きかねない。
「あ、そうだ、今度の土曜日にお兄ちゃんが帰ってくるって。破天荒さんのことも伝えてあるから」
「ソフトンが帰ってくるのか!」
「あー、オレってもしかして邪魔か?」
 破天荒のひと言にビュティは首を振る。彼女としては新しい同居人である破天荒のことを兄に紹介したかった。個性豊かな同居人に囲まれて充実した日々を送っている、と。
「邪魔じゃないですよ! むしろ迷惑じゃなければいてほしいというか……」
 彼女は片付けの手を止めてやや上目遣いで破天荒のことを見た。首領パッチも彼女に同調する。
「ビュティもそう言ってんだし会ってみたらどうだ?」
「おやびんがそう言うなら」
 首領パッチの言うことにはとことん弱い破天荒であった。ビュティは顔を綻ばす。そんな彼女の表情を見て破天荒はまんざらでもない気持ちを抱く。片付けを済ませてビュティはお風呂に入る。



◆後書き◆
一応続き物。ほんのり世界線のヘポビュ書きたかったのにな~へっくんのへの字しか出てこなかったな~。
題名は音楽記号。本当は別のタイトルにしてたけど似たような響きのタイトルを見つけて変更。困った時の音楽記号。オケは良いぞ、と耳が馬鹿な奴が言ってます
ビュティさんと首領パッチと破天荒の三人は三人で独特な関係性だったり。ビュティさんの無限の可能性。ボボボーボの方のビュティさんと比べたら何という事でしょうになってるけど私は両方好きです。って両方お出しされた状態で触れたから言えるのかもしれない。温度差で風邪引いちゃう。



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