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BleuCiel(別館)

気の赴くままに

【プリキュア】SS集

プリキュアシリーズ。MH多め。
SS(掌編)まとめ。随時更新。



up (MH後/藤なぎ+ほのか) 20250727


 なぎさを待つ藤村の前に現れたのは、彼の幼馴染だった。鞄と紙を持ってすっと藤村の横に立つ。
藤村「……ほのか、その紙は俺が預かっておくよ」
ほのか「藤村君に手間かけさせるつもりはないわ」
藤村「ほのかこそ生徒会の仕事もあるだろう?」
 遠目から見れば美男美女のそういう関係にも見えなくはないが、実際のところお互いに牽制しているだけだ。ミップルがほのかにだけ分かるように合図を送る。ほのかは素早く親友の名を呼んだ。
ほのか「……なぎさ!」
なぎさ「お待たせしましたー、ってほのか!? 何かあったの!?」
ほのか「生徒会からラクロス部にって」
 なぎさは用紙を受け取る。藤村がなぎさの肩を叩いた。
藤村「さ、帰ろうか、なぎさ」
ほのか「あら、私も帰るつもりだけど?」
なぎさ「(二人が怖いよー)」
ほのか「……」
藤村「……」
 ほのかも藤村も笑顔なのに視線がするどい。なぎさは深呼吸をする。
なぎさ「ささ三人で帰りましょ! ……あ、その前にこの紙を鞄に入れてっと」
 今日はまだ平和なほうだった。タコカフェの手伝いでひと足先に帰ったひかりもほのかの味方をすることがある。
ほのか「(藤村君との恋は応援したいけど、)」
藤村「(ほのかとの関係は続いてほしいけど、)」
ほのか/藤村「(なぎさのことが好きだから)」
 幼馴染だけあって思考もどこか似ている二人だった。



up (MH後/キリほの) 20250727


 ほのかは自宅の縁側で空を見上げる。夜空には星が輝いていた。
 もう会えぬ者のことは心の奥底にしまい、ほのかは日常生活を送っていく。……送っていくはずだった。
「(どうしてキリヤくんは来ないの?)」
 戦うだけの関係から何かを変えることもできるのではないか。彼女のなかに一縷の望みが生まれたのは、ほかのプリキュアと出会ったから。
 敵対していた者が改心してこちら側に付く。ひと筋縄ではいかなかったが仲間はやり遂げた。
 ほのかは目を閉じる。プリキュアとして戦うことが少なくなった今なら行動できるかもしれない。
「……絶対なんて、ありえない」
 彼女は真剣な面持ちで再び空を見上げる。腹をくくった。

「なぎさ、ひかりさん、話があるの」
 放課後、ほのかはなぎさとひかりを家に誘う。
「今まで我慢してたけど、どうしても我慢できなくて。私たちにもキリヤ君を連れてくる権利ぐらいあるよね?」
「ほのか……」
「ほのかさん……」
 ほのかは自分の気持ちを正直に告げる。ひかりは直接キリヤと関わっていない。しかし、彼の存在は二人から少しだけ聞いていた。
 二人の語り口調から詳しく聞かなくても彼女たちにとって傷のひとつであることは察することができた。
「具体的にどうすればいいかなんて分からない。でも、試さないことには何も始まらない」
「……ほのかさん、私が口出しすべきではないかもしれないですが、そのせいで何かあったとしても?」
「ええ。今回ばかりは譲れないの。せめて二人には事前に知ってもらいたくて」
 ほのかは動くこと前提で話をしている。彼女にしては珍しい。



up (SS後/咲) 20250727


 青い空、頬を撫でる心地良い風、絶好のソフトボール日和だ。咲は仲間を信じてボールを投げた。面白いようにボールは捕手のミットに吸い込まれる。
「(絶好調なり!)」
 高校三年生になった咲は親の跡を継ぐため、この試合でソフトボールとは距離を取る。
 投手として、そして打者としての力量もある咲は強豪校から声がかかっていた。家族や舞、ソフトボール仲間にも相談をしたが咲の考えは変わらない。
 捕手とサイン交換をする。年齢が上がるにつれ、そして日本代表も経験して勝ちの重みを知ることとなる。
「……うん」
「(咲に負けてられないね)」
 咲は捕手の要求通りのコースに投げる。相手チームの打者は翻弄されて、本来のスイングができない。打っても凡打になってアウトになってしまう。しかし相手チームは投手力が自慢のチームで、盾はなかなか砕けない。
 我慢比べが続く。均衡が破れたのは最終回だった。一点でも入ればサヨナラ勝ち。咲のチームの打者が粘りに粘って塁に出る。
 次の打者がアウトカウントひとつと引き換えに一塁にいる選手を二塁に進めた。みんな、そして大半の観客がここがターニングポイントだと察する。
「咲、ごめん」
「気にしないで。わたしもいいところを見せなくちゃ。……ありがとう!」
「っ……、どういたしまして!」
 すれ違うときに会話をしてグータッチをした。客席にいる舞は一心不乱にスケッチブックとマウンドに視線を行き来する。プリキュア仲間も都合のつく者は客席で応援していた。
「行くよ!」
 ツーアウト、もう後がない。咲の次のバッターも当たれば遠くに飛ばす力を持っている。
 失投らしい失投はほとんどない。次につなぐことも考えつつ、彼女は自分の一打で勝ち負けを決めたかった。
「(後悔はしたくない!)」
 盾のわずかながらの綻びを彼女は見切った。球がバットに当たる。球威に負けないように思いきって振り抜く。球は放物線を描き、外野手の頭上を通り過ぎる。
「「「いっけえー!!」」」
 勝負に出た監督は走者を走力のある選手に変えていた。守備との鬼ごっこが始まる。
「セーフ!」
「…………、わわっ」
 咲の時間が止まる。彼女の時計を動かしたのはチームメイトだった。咲とバッテリーを組んだ捕手は咲に抱きつく。


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